住み慣れた施設で最期まで暮らすということ

最期をどこで過ごしたいですか?

人生の最期をどこで過ごしたいですか?
ご本人の望みは・・・
ご家族の望みは・・・

かつては多くの方が自宅で最期のときを迎えておられました。今では、病院(医療機関)で亡くなる方が多くいらっしゃいますが、それ以外にいろいろな施設でも最期を過ごすことができます。
痛みを和らげ、穏やかに、ご本人が過ごせたらよいですね。
この記事は、施設での看取りについてご家族の方々に参考にしていただけるように作成しました。

本人の気持ちに想いを馳せる

最期をどこで過ごしたいか、ご本人の価値観に沿った選択ができるといいのではないかと思います。
ご本人と話し合いができれば一番良いのですが、もしできない状況であれば、ご本人はどのように生きてきたのか、残りの人生をどんな風に生きたいと思われるかを、考えてみてはいかがでしょう。

施設の看取りとは

心身の機能低下や病気の悪化により衰弱が明らかで、回復が見込めない状態であることから、医師の診断を受け、ご本人やご家族の同意のもと、ご本人、ご家族の心身の負担の軽減を最大限に考えながら最期のときを施設で過ごしていただくことをいいます。

施設で最期まで暮らすということ

施設では多くの職種が専門性を生かして協力し、ご本人が慣れ親しんだ施設で最期まで暮らすことを支援します。例えば、思い出の写真を飾るなどして家庭的な環境をつくり、体調に応じて入浴も可能です。
今までのライフスタイルを尊重しつつ、施設でできる介護や医療を提供し、残された時間を大切にし、ご家族と共に過ごして頂きます。
施設の職員は、安らかな人生の最期を迎えることができるよう、ご本人とご家族の気持ちに最期まで寄り添いたいと思っています。

ご家族の声

①「母の延命を願って胃ろうの手術を決断したことが、正しかったのかどうかずっと悩んでいました。とうとう栄養注入もできなくなった母を病院から施設へ受け入れていただきました。遠方から呼び寄せた母を、最期は私一人で送ることになると思っていましたが、スタッフの皆様に囲まれ共に送ることができました。本当に感謝しています。」

②「最期まで人間の尊厳を大切にしていただき旅立ったことは、家族も報われほっとしております。夕方遅くまでそばに付き添ったおかげで、スタッフの皆様とも話に花が咲くほど親しくなり、明るく穏やかな日々を夫と送ることができました。この施設に入って9年、床ずれもなくきれいな身体で看取っていただきありがとうございました。心から感謝申し上げます。」

③「病院で『点滴と抗生剤の治療をやめると3日ともたないと』言われながら、母を施設に連れ帰りましたが、そこから2ヶ月間母は頑張ってくれました。熱心に介護してくれた皆さんのおかげで、食事も少しとれ、母もしかめっ面から安心しほっとした顔に変わりました。十分な時間をいただき親戚や家族も本当に満足しています。」

老衰とは

老衰とは、長い期間にわたり、徐々に全身の臓器の委縮、機能低下がみられ、生命を維持できなくなる状態のことです。
人の体は楽に逝けるように、体内の水分をできるだけ減らそうとしていきます。そのようなときに無理に水分や栄養を入れると、逆に体に負担をかけてしまい、むくみがでたり、腹水がたまったり、痰も多くなってしまいます。体が求めるままに、うとうと眠り、食べたいものを口にするだけでいいのです。一時的にぜいぜいすることがありますが、最期は無理に吸引や点滴をせず自然にしている方が楽な場合も多くあります。

最期のときが近づいた時に訪れる変化

○食事
消費エネルギーの低下にともなって、自然に食事や水分をとる量が減ります。無理に食べさせたりせず、ご本人が希望されるものを食べさせてあげましょう。

○意識
体力の低下により、眠っている時間が多くなります。無理に起こさず、ゆっくり眠らせてあげましょう。
また、意識が薄くなり、呼んでも返答がなくなります。たとえ返答がなくても、最期まで聴覚や触覚はありますので、そばにいて話しかけたり、手を握ったり、身体をさすったりしてあげましょう。

○排泄
尿や便を排泄する筋力の低下により、だんだんと失禁が起こりやすくなります。また、尿の色が濃くなったり、尿量が少なくなったりします。

○呼吸
呼吸のリズムが不規則になったり、肩や顎を使って呼吸をすることがあります。ときには、30秒ほど休むこともあります。そばにいて手を握り、言葉かけをしましょう。
また、痰や唾液をうまく出せなくなり、口の中が乾燥して喉がゴロゴロとすることがあります。濡らしたガーゼや綿棒で湿らせてあげましょう。

○体温
血液の循環が低下し、手足が冷たくなったり、皮膚が紫色になったりします。手をさすったり、毛布をかけるなどして、温めてあげましょう。

○言動・行動
脳の酸素循環の低下により、つじつまの合わないことを言ったり、興奮したり、手足を動かすなど落ち着かなくなることがあります。
大きな音をたてて驚かせたり、つじつまの合わないことを訂正したりせず、静かに落ち着いて対応しましょう。

どのような時でも施設では、ご本人やご家族の思いに寄り添い、一人ひとりの症状に合わせた対応を心がけながら、日常の暮らしの延長として最期のときまで、その方の尊厳を守るようサポートします。

迷って当たり前

「病院には入院せずに施設で看取ると決めたが、本当にそれでいいのだろうか。」「やっぱりやめたいと言ったら、施設の方々に迷惑をかけるのではないだろうか」悩んで迷って当たり前です。今の気持ちを正直に施設のスタッフに伝えてみてください。

お別れが近づいたとき

悲しみ、つらさ、いろいろな想いがあふれることでしょう。どうか、少しでもそばにいてあげてください。ご家族がそばにいてくれることは、ご本人にとって一番安心できることです。返事ができない状態でも周囲の声は聞こえています。どうぞ、想いを伝えてあげてください。
ご本人とご家族が安心してお別れを迎えるために、不安や心配事がありましたら遠慮なくご相談下さい。

お別れをした後

悲しみがこみ上げてきたり、つらい気持ちになったりすることもあります。このような気持ちになることは自然な反応でもあります。気持ちを抑えこまず、遠慮なくご相談ください。周囲の人に話を聴いてもらうことでつらい気持ちが和らぐこともあります。

 

参考文献「福岡県保健医療介護部高齢者地域包括ケア推進課」パンフレット